オギの備忘録

やあ、私の名はオギだ。何かを発信したかった。ブログを開設した理由はそれだけで十分さ。

大学共通テストを導入する意義とは

[目次]

 

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はじめに

 

※訂正

2021年度の共通テストも全てマークシートでの回答となりました。

そのため、この記事に書かれていることは、

「今後、記述式の共通テストを考えたときにどうなるか」

を想像した上で読んでください。

 

 どうも、オギです。
 この記事を執筆している1月16日、コロナ禍ではありますが、初めての大学入学共通テストが実施されます。
 つまり、30年ほど続いてきたセンター試験が終わりを告げるわけです。
 公式の方から、問題形式の例題は提示されているとはいえ、記述式の問題も含んだ今回のテストは、平均点的な意味でかなり荒れることになるでしょう。

 

 そもそも私は思いました。


「なぜ共通テストを実施する必要があるのだろうか?」

 
 前回の記事の内容とかぶってしまう点についてはご容赦いただきたいです。

 

共通テストを行う背景には何があるか


 大学入試センターの公式HPには以下のように記載されています。(以下抜粋)*1


・大学教育の基礎力となる知識・技能や思考力、判断力、表現力等を問う問題作成
 平成21年告示高等学校学習指導要領において育成することを目指す資質・能力を踏まえ、知識の理解の質を問う問題や、思考力、判断力、表現力等を発揮して解くことが求められる問題を重視した問題作成を行います。

 

 AIや人工知能の発達により、従来の単純めいた作業が機械によって代替される時代になりつつあります。このような時代においては、人間の持つクリエイティブな発想がより重要視されることが予想されます。よって、「知識・技能や思考力、判断力、表現力等を問う」ことが重要視されるのでしょう。

 まあ、私としては、
・AI自体が、人間から仕事を奪える段階にまで発展していない
・仕事は時代の変遷とともに淘汰され、誕生するものでもある
と思っているので、火急の問題ではないと信じたいのですが…。


具体的な変更点


 センター試験との主な変更点は以下のようになります。


・数Ⅰの試験時間が70分になる
・理科科目の選択問題の廃止(完答)
・英語の筆記が100点満点、リスニングが100点満点になる
・英語の筆記において、「発音・アクセント・語句整序など」を単独で問う問題の廃止
・リスニング音声の再生回数の変更(問1,2は2回、問3~6は1回)

 

 主に数学・英語の仕組みが大きく変わるといったところでしょうか。


そうなると、記述問題がネックになってくる

 

 では、大学入学共通テストとセンター試験の違いは何でしょうか?

 一番は「記述式の問題がある」ということでしょう。確かに、筆記試験における記述問題は、回答者の思考・判断・表現力を見るのに一番適した回答方式です。また、回答者の文章作成力を見ることもできます。

 しかし、この記述問題がネックになってくるわけです。皆さんも学生のころ、テストでの記述問題に苦手意識を持ったことがあるかもしれません。そう、筆記試験において、記述問題ほど面倒くさい問題はないのです。しかも、それが将来を左右する問題であるなら尚更。
 それは、今年の共通テストの受験者数にも表れています。

今年の共通テストの受験者数535,245人(昨年比4.0%↓)
現役生449,795人(前年比0.5%↓)
浪人生81,007人(前年比19.3%↓)となっています。*2
 浪人生の受験者がかなり減っています。このことから、「共通テストの受験をなるべく避けたい」といった受験者の心理が見えてきます。その理由には、記述問題の導入も関係してくるでしょう。


今の若者の記述力とは如何に

 

 この問題に触れるということは、自分の傷を抉ることにもなり兼ねないのですが、あえて書いていきます。
 先日、この記事にインスピレーションを受けました。参考までに載せておきます。*3


 では。現在の若者の記述力はどうなっているのでしょう。
 参考として、OECD(経済協力開発機構)*4が実施している学力到達度調査のPISA(Programme for International Student Assessment)のテスト結果を見てみましょう。*5
 PISAとは、3年に一度、15歳の子供を対象としたテストのことです。これの総評が新聞に載ることもあります。ちなみに、次のOECDは2021年です。

 

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日本のPISAの結果(過去7回分)


 この図を見ると、日本の成績は全体的に見て右肩下がりであることが分かります。また、読解力の順位が比較的低いです。
 記述問題を回答していく上で重要になるのは、

・その問題文をしっかり読めているか

・何を答えるべきかを理解しているか

です。この2点をクリアするためには、読解力が必要になってきます。記述力と読解力は切っても切れない関係なのです。


なぜ日本の若者の読解力は低下しているのか

 

 では、なぜ日本の若者の読解力は低下しているのでしょうか?
 それは「文章を読んでいない」からです。最近はスマホ、ゲーム機などの娯楽が充実しているので、余計にそうなのかもしれません。

 勿論、「今は電子書籍という手段もある」という声もあるでしょう。しかし、中学生で電子書籍リーダーを活用している人は全体の何%なのでしょう。現実的に考えると、ペーパーレスの時代でも、紙の本の重要性はそれなりにあると思います。
 私は、幼少期によく読み聞かせをしてもらったおかげで、中学生くらいまでは本をしっかり読んでいました(恐らく)。高校では全く読書をしていなかったのですが、大学に進学してからは結構読んでいます。
 それはさておき。やはり、中学生までにどれだけ活字を読んできたかが、読解力の差につながってくると、私は考えます。「三つ子の魂百まで」と言いますしね。勿論、大人になってから読解力を付けることも可能だとは思いますが、右利きの大人が左利きに矯正するようなものです。
 学校側でも、早期の読書習慣の定着は重要であると考えていると思います。小・中学校の朝読書、読書感想文がそのいい例でしょう。
 ちなみに私は高校の頃、現代文の授業で、月1で軽めの読書感想文を書くという課題が出されていました。…webであらすじコピペしてすいませんでした。


それでも生徒には届かない


 しかし、いくら大人が「読解力大事!本読め!」と声高に訴えたところで、子供達には響かないのが現状です。大事なことほど伝わらないものです。これは、私自身の経験からも言えることです。
 私は塾講師の仕事をしています。その塾では、授業開始直後に復習テストを実施するのですが、半数くらいの子がスマホゲーやSNSをしています。授業開始前にテキストを開いて確認する生徒は少数です。
 また、授業中にも「これ勉強して何になるの?」「これ実際に使う機会ある?」といった質問をしてくる生徒もいます。私は、「義務教育課程の勉強内容自体に深い意味はないが、思考力・教養・表現力などを養うためにやっておく必要がある」という認識を持っています。そういったことを件の生徒に伝えるようにはしているのですが、なかなか理解してもらえないのが現状です。

 これは、脚注3の記事にも記載してあるのですが、「効果が目に見えづらいものは軽んじられる」という風潮のせいなのかもしれません。「役に立たないと思われるものは軽視される」とも言えるでしょう。そういった人間の根幹を構成する、いわば「目に見えづらいもの」ほど重要ではあるのですが、目に見えづらいものの重要性が認識されにくいというのもまた現状です。

 

そもそも共通テストを導入する意義はあったのか?

 

 話を戻しましょう。ここまで、共通テストに記述問題を導入する理由、読解力の問題を挙げてきました。ここまでの話を振り返ると、
「今の子供たちには読解力・記述力が足りないから、共通テストにそれらを色濃くした問題を出題し、読解力・記述力の底上げを図ろう」という意図で、大学入試センターが今回の改革に踏み込んだということが分かります。
 しかし、共通テストの実施に反対意見があるのもまた事実で。*6

 共通テストの問題点としては、


・50万人以上の記述回答を、全受験者が満足のいく形で採点できるかどうか
・採点基準が採点者によって変動しないか
・採点に時間が掛かるのではないか
・数学については、結局答えだけを回答する、従来と同じ形になってしまっている

 (大学入試センターが出した例題の時点ではそうだった)


があります。
 私個人としては、「センター試験をそのまま継続しても良かったのではないか」と考えています。センター試験の出題形式のままでも、十分に受験者の格付けは出来ていたからです。また、マークシート形式の採点効率がよく、受験者がすぐに自己採点ができる点も魅力的です。センター試験での得点率がある程度分かっているので、二次試験での対策も立てやすくなりますしね。

 とはいえ、変わってしまったものは仕方ないです。部外者である我々は、共通テスト初年度の流れを見守ることしかできないのです。


総括 ~思考を止めるな!~

 

 さて、総括です。私がこの記事で伝えたかったことは、


・活字を読め!
・思考することから逃げるな!


 この2点だけです。これは、私自身に対する戒めでもあります。
 若者の読解力・記述力低下が叫ばれている現在。大学進学率の増加によるモラトリアム期間の延長も相まって、思考力・文章力が十分でない学生が増えていると、私自身、大学での人付き合いで感じました(元々友人は少ないので信憑性に欠けるのですが…)。
 記事の途中で、大人になってから読解力を身に着けることは大変だ、と述べました。しかし、だからと言って、それが思考を放棄する理由にはなりません。

 

 人間の創造力がより重宝される時代。人間としてのアイデンティティである「考える力」を養わないことには、旧時代に取り残されてしまうでしょう。