オギの備忘録

やあ、私の名はオギだ。何かを発信したかった。ブログを開設した理由はそれだけで十分さ。

「完全自殺マニュアル」を読んで

毎度書影の撮影が適当

[目次]

 

はじめに

 突然だが、皆さんは今までの人生の中で1度でも「自殺したい」と思ったことはあるだろうか?
 私は高校時代から今に至るまで何回も、何十回も思ったことがある。私には才能もなければ、教養も一般常識もない。そんなゴミみたいな存在が「人生100年時代」と言われる今の時代を生き抜いていけるのだろうか? 正直かなり厳しい。
 何の価値も作り出せない自分に生きている意味はない。高校の勉強から脱落し、自己肯定感がみるみる低下していくうちに、自殺に救いを見出したこともある。「今すぐこの人生を終わらせることが出来ればどれほど楽だろうか」と。

 だがここで1つ問題が生じる。

 

どうすれば確実に死ねるか

 

 普通の人間は自殺願望を抱かないので(コロナ禍で自殺者が微増している今、これは必ずしも保証できるものではないが)、周りの親しい人間に確実な自殺の方法を聞いたところで、精神病院か、良くてカウンセリング行きになるのは確実だ。
 ならば自殺経験者にインタビューするのはどうだろうか? 否。「死人に口なし」とは小学生でも分かることだ(自殺未遂者からなら話を聞くことは一応できるが、結局は「自殺未遂体験記」みたいな微妙なものになってしまう)。
 じゃあ僕/私は一体どうすればいいんだ! どうしたらこんなクソみたいな世の中から脱却することが出来るんだ!! まあまあ、そう焦らずに。今回紹介するのは、そんな貴方のための本なのですから。

 

完全自殺マニュアル」とは

 今回紹介する「完全自殺マニュアル」は、1993年にフリーライター鶴見済(つるみ・わたる)氏が書いた本である。タイトル通り、自殺のやり方に関する内容が約200ページにわたって記載されている。言わば「自殺の参考書」である。大学受験における「赤本*1」であり、鉄緑会における「鉄壁*2」なのだ。
 本書は実際に起こった事例・文献を多数引用しながら(事例が古いのは仕方ない)、それぞれの自殺方法のメリット・デメリット、難易度、致死性などについて真剣に考察をしている。ちなみに、本書でメインに取り上げている自殺方法は、下記の10種類である。

①薬物自殺
②首吊り
③飛び降り
④手首・頸動脈切りなどの自傷行為
⑤電車への飛び込み
⑥ガス中毒
⑦感電
⑧入水
焼身
⑩凍死

 

 本の構成上、メジャーな自殺方法にページが多く割かれているため、正直「⑥ガス中毒」以降からのボリュームに物足りなさを感じることもあるだろう。しかし、約200ページを掛けて丁寧に自殺の方法を記載している本書はとてもありがたい存在であり、今後本書を超えてくる自殺の指南書は現れないだろうと確信させてくれる。
 しかし残念なことに、本書は一部の県で有害図書認定を喰らってしまった過去がある。現在は書店やインターネットで普通に購入することができるが、「18歳未満の方の購入はご遠慮ください。」との帯がセットで付いてくる始末である。非常に嘆かわしい。
 これは余談だが、日本版Googleで「完全自殺マニュアル」と検索すると、先頭に「こころの健康相談統一ダイヤル」とかいう、厚生労働省が運営している電話相談窓口の案内が表示される。検索妨害もいいところだ。ファッキュー厚労省

 

個人的に一番いいと思った自殺方法

 先程、本書にメインで記載されている10個の自殺方法について羅列した。この中から私が一番良いと思ったorダメだと思った自殺方法を述べていく。まずは良かった方から。
 私が最も良いと思った自殺方法は、ズバリ「首吊り」である。本書を読むまでは、「首吊り自殺はロープが切れて未遂になる可能性があるから不完全だ」と思っていた節があった。しかし、自分の首がいい塩梅で締まっていれば、ドアノブくらいの高さからロープを吊るして、寝転がった状態で自殺することが可能なのだ。また、首吊り自殺の際に大量の睡眠薬を服薬したり、部屋を一酸化炭素等で充填させておけば、眠るように死ぬことが出来るとのこと。実はかなりコスパのいい自殺方法だということを、本書から学んだ。

 

個人的に一番ダメだと思った自殺方法

 反対に、個人的に最もダメだと思った自殺方法は「電車への飛び込み」である。まず当たり前のことだが、踏切などの電車が全く原則していない区間で飛び込み自殺を行うとほぼ確実に即死する。この点だけを考えれば自殺の方法としては100点満点なのだが、ダメだと思った理由がある。
 それは、当事者以外誰も得をしないということだ。まずは遺族。一般的には、電車を故意に止めると秒単位で賠償金を請求されるだとか、数千万円~数億円の賠償金を請求されるなどと言われている。私も小さいころから親によく言われてきた(真偽は当事者とその関係者のみ知るところだが)。
 次に鉄道関係者。警察への対応、散らばった肉片の処理、車両の修理、利用者の誘導・アナウンス、人を轢いてしまった運転手のメンタルケアetc……。あまりにやることが多すぎる。車両の数も人員も潤沢にあるわけではないから勘弁してほしい。
 最後に我々利用者。私は人身事故が多い路線沿線に住んでいるため、自分が電車を使うときに限って人身事故が発生する、という事態は学生時代から経験してきている。特に早く帰りたいときは、遊びに行くときなどに人身事故に遭うと非常に腹立たしくなる。これは私だけの問題ではない。その路線を使う人全員に迷惑が掛かる。中には、絶対に遅れてはいけない事情を抱えている人もいるだろう。
 「自殺」とはつまり、いつ来るか分からない「死」の瞬間を能動的に操作する行為である。そんな、基本人類にしかできない特別な行為を、多くのヘイトによって台無しにするのは勿体無い。「死」は人生に1回だけの一大イベントである。ならば、あまり顰蹙(ひんしゅく)を買うような最期はよろしくない。

 

最後に

 本書には自殺の方法が事細かに記載されているが、それ以上でもそれ以下でもない。実のところ、本書は読者に自殺を促すようなものではない。「生きたい人は生きればいいし、死にたくなった人は本書を参考にして死ねばいい」というのが鶴見氏のスタンスだ。カリギュラ効果の逆のようなものだろう。
 ちなみに、本書が刊行されたのが1993年であるが、その翌年1994年の自殺者は前年よりも減少している。本書が自殺者増加のきっかけになったとは言い難い(こんな本一冊の効果よりも、経済状況や社会情勢が自殺者数に大きく影響を与えることは自明だろう)。

 

 まあ、ここまでグダグダと色々述べてきたが、1つだけ確かなことがある。このブログを投稿したら、本書にはしばらく本棚で眠ってもらうということだ。この偉大な参考書は今の私には不釣り合いだ。漠然とした、形にならない自殺願望だけを抱えていても、持て余してしまうだけだ。明確な目的や理念もないまま、ただ怠惰に「自殺」という劇薬を求めること。自殺を決行する気概も覚悟もないクセに自殺のことを考えること。これらは「死」に対する冒涜だ。「自殺」という行為に対して失礼だ。
 以上のことから、私には自殺する資格はない。その資格があると確信できるときまで、この腐った世界を生きていかなければならないのだ。だから、本書には本棚で待機していてもらう。来たるべきその時のために。

[本書以外の参考文献]

「ルポ自殺 生きづらさの先にあるのか」 著:渋井哲也 2022年 河出新書

*1:

鉄緑会:東京と大阪に校舎を構える、中高一貫校の生徒を対象とした東京大学受験指導専門塾。1983年設立。中高一貫校の生徒を対象にしているため、入塾生は開成・桜蔭麻布高校などのエリート校ばかり。2022年度の合格実績(代々木1拠点のみ)は、東京大学合格452人。

https://www.tetsuryokukai.co.jp/

*2:

※鉄壁:正式名称は「鉄緑会東大英単語熟語 鉄壁」。鉄緑会のメソッドを基に作られた英単語・熟語帳。難関大学合格を目指す受験生向けに作成されているので、一般的な単語帳よりもハイレベル。しかし、鉄緑会独占テキストというわけでもないので、下記のURL等から購入することも可能。ちなみに、本ブログ著者の高校の同級生がイキって鉄壁を使用していたような気がする。。

https://www.kadokawa.co.jp/product/321904000761/
https://www.amazon.co.jp/dp/404604411X?tag=kadoofce-22