オギの備忘録

やあ、私の名はオギだ。何かを発信したかった。ブログを開設した理由はそれだけで十分さ。

「ラプラスの魔女」を読んで

人間は優れた知能や高度な文明をもちながら尚、未来に対しては盲目である。

 

 

ラプラスの悪魔」をご存じだろうか?ある時点における全ての初期条件、及び状態を把握し、未来に起きる事象を全て見通すことのできる超存在の事である。
 簡単な物理法則で説明した方が分かりやすいだろう。高校物理で学ぶ「斜方投射」の式を例に挙げる。

 

v(x) = v(0)conθ x軸方向の速さ(m/s)
v(y) = v(0)sinθ-gt y軸方向の速さ(m/s) 
※v(0) = 物体の初速(m/s)、θ = 投射角度、g = 重力加速度(9.8m/s^2)、t = 経過時間(s)

 

 この場合、v(0)、θ、tが分かっていれば、ある時点における物体のx及びy軸方向の速度を計算で求めることができる。また、上記の式を時間積分した後に然るべき値を代入すれば、ある時点における物体の位置を計算で割り出すことができる。
 もし、高校生が物理の問題を難なく解くように、全ての物体の動きから人の動き、はたまた人類の未来まで予想することができる人間がいたとしたら?そしてその人間が悪事に手を染めようとしたら?

 

 物語は、山奥で起きたある不審死から始まる。地球化学専門の大学教授「青江」は、専門家的視点から事件の調査に関わることになる。そこで出会った謎の少女「円華」。彼女の正体は「ラプラスの魔女」であった。常人では到底たどり着けない事件の真相の裏に隠れた、狂気の全貌とは――。

 

 流石は東野圭吾と言うべきか。とても読みごたえがあり、面白かった。特にラスト100ページの怒涛の展開には引き込まれた。

 

 我々は、遠い先の未来がどうなっているか予想することはできない。だからこそ、未来に希望を抱くことができる。明日は今日よりもいい日になるだろう。数年後にはこうなっているだろう、などと。
 では、自分の将来を含む全ての未来を見通すことができてしまったとしたら?確定している未来をなぞるのは非常に退屈で、毎日が空虚に思えてくることだろう。
 望まずにラプラスの悪魔になった者と、望んでラプラスの魔女になった者。彼らの行く末は、彼らが見据えている未来とは。少なくとも、常人が理解してはいけない領域なのだろう。