どうも、読書報告の時間です。直近2本の記事は評論文の感想だったので、今回は小説(ライトノベル)の感想でも書いていきます。
[目次]
あらすじ
2010年代後半に突如として現れた存在、「Virtual Youtuber」。通称「Vtuber」。
彼ら、彼女らの存在感・そしてVtuber市場はここ数年で急激な拡大を見せ、やがて「オタク文化」を語るのには必要不可欠な存在となっていた。
そんな「大Vtuber時代」の最中、1周年記念ライブを終えた夢叶乃亜(むかなえ・のあ)が突如引退した。
大Vtuber時代において、Vtuberの引退は珍しいものではない。しかし、「乃亜推しカルゴ」こと苅部業(かるべ・ごう)はその日全てを失った。
全てを失った業(ごう)は、Vtuberの炎上事件をまとめるブロガーに転身する。そんな彼の元を訪れる3人のVtuber。果たして彼らの行く末は天国か、地獄か。
感想
本書には地名・建物を含む大量の固有名詞が登場する。Youtube、pixiv、Discord、Boothなどなど。Vtuberを追っている人なら当たり前のように知っている単語。逆に言うと、それが物語のリアリティを強くしていると私は考える。
とまあ、ここまで固有名詞が出てくることに少し驚いたということです。
閑話休題。
本書に感じ取ったのは「圧倒的なまでのリアリティ」である。私はVtuberを熱心に追っているわけではないが、Twitterを開くとそういう類の情報は入ってくる。
あの事務所から新人がデビュー! ○○が引退! 炎上! 生配信がトレンド入り! ○○がYahooニュースに掲載! ……etc
そういった情報に慣れているからか、本書に記載された内容に対して傍観者になりきることはできなかった。この349ページに書かれていることは現実的に起こり得ることなのだ。
自らを引退させてほしいと尋ねるVtuber。炎上を起こして引退秒読みのVtuber。かつての人気Vtuberの面影を勝手に投影させられているVtuber。
本書のタイトルは「Vtuberのエンディング、買い取ります」。Vtuberにとっての理想の幕引きとは何なのか? いや、そもそも理想の引退なんてものはあるのだろうか?
三次元のアイドルよりも身近で、それでいて不安定な「Vtuber」という存在。彼ら、彼女らを推すことに意味はあるのだろうか?それらの答えの1つが本書に提示されていると私は思う。
「Vtuberのファン」というものは、基本的にどこまでいっても第三者だ。その愛は一方通行だ。しかし、それでも私たちは、気が付くと配信待機画面の前に座してしまうのだ。